集積

書きたいときに書くだけ

哀愁と迷い


私は過去の収拾をつけることを昔から放棄している。22年生きていて、数年前を意図して顧みることをほぼしない。思考する上での議題としては、過去の出来事よりも今現在の出来事の方が意味を持つ気がするから。そんなわけで、必要性を感じていなかった習慣なんだけれど、ひょっとするとその考えは間違っているかもしれない。


私は誰かと二人きりで、時間を気にせずにわりとパーソナルな話をするのが好きなんだけど、ある人と偶然「あの頃は何をしていたか」という話になって、その人の過去の出来事を聞く機会を得た。それは、思い出と感情がしっかりとリンクしたものだったので、聞いていてとても心地よかった。年齢を重ねて懐古や昔話をし慣れた老人は往々にしてこんな雰囲気で私たちを慰めてくれるけれど、淡さと情熱とが混じり合った不思議な視点から出される彼の言葉は、どこか浪曲めいていて随分と聞き入ってしまった。また、一方で彼は若者らしい迷いや不安も平行して垣間見せてくれるので面白い。彼は他人から退屈だと思われることを恐れているらしかった。その哀愁にしてその初々しい悩みはあまりにもバランス感覚に欠けているだろう、と思って思わず笑ってしまった。

私は他人に威圧感を与えてしまうこと(自分を適切に表現することが苦手)が悩みなので、彼との会話からはたくさん学ぶものがあった。私もたまには昔を懐かしんで、当時の出来事を整理してみようかな。そうすれば、自分を晒すということが今よりちょっとは苦でなくなるかも。